猫の腎不全に対するアルテミシア アンヌア長期使用例の紹介

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猫の腎不全に対するアルテミシア アンヌア長期使用例の紹介

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2025/06/09 猫の腎不全に対するアルテミシア アンヌア長期使用例の紹介

腎不全の猫、14歳、去勢雄にアルテミシア アンヌア(クソニンジン)を5ヶ月間投与中です。

2022年6月から、30歳まで生きることを目標にしたフードに変更をし、それと同じ成分が配合されたおやつの給与も開始しています。

給与開始時、血液検査でBUN、クレアチニンはともに正常値であり、触診及び超音波検査で腎臓のサイズは正常である事を確認しています。

2025年1月、重度の口内炎及び体調不良により食欲廃絶となりました。

 


腎臓の健全性を維持してくれるはずの食餌は効力を発揮してくれず、血液検査においてBUN140以上、クレアチニン11.4、触診で左右ともに高度の腎萎縮が確認されました。

連日の皮下補液に加え、経鼻カテーテルを設置し、流動食に粉末状にしたアルテミシアアンヌア(クソニンジン)を混ぜたものを強制給餌し続けた結果、およそ3週間後には自発的に飲水及び食餌の摂取をすることができるようになりました。

その後現在まで皮下補液は不要となっております。

アルテミシアアンヌア(クソニンジン)を自発的に摂取してくれず、現在まで5カ月間強制的に投与を継続していますが、副作用は認められておらず、体調は良好、食欲旺盛、飲水量も維持必要量摂取できています。

尿の性状は変化なく、無色透明で多尿が継続しているにも関わらず現在まで脱水は起こっておりません。

 

アルテミシア アンヌアは体調そのものをよくしてくれる(論文より)

アルテミシア アンヌアの投与が、がんや腫瘍を患う犬や猫の体調そのものを良くしてくれるという状況を私は多数経験しております。

アルテミシア アンヌアの使用について相談を受ける多くは、すでに手遅れ状態でどこに相談しても打つ手がなく、ご家族の多くは見放されたと感じており、それでも何かしてあげられないかと色々調べたあげく当方に連絡をいただきます。

アルテミシア アンヌアはがんや腫瘍に対しフェロトーシスやアポトーシスを起こす効果がありますが、全てのがん・腫瘍細胞に効くわけではなく、効果あるタイプであったとしても手遅れ状態のものを治せるわけではありません。

しかし、亡くなる当日まで食べたい気持ちを持って食べる、痛みやつらさがないもしくは軽減した状態でいられたなどの話が寄せられ、感謝の気持ちを述べてくださる電話を多く受けます。

がんや腫瘍を患う犬や猫における体調維持の状況は以下の論文に紹介されていますが、腎不全を患う動物たちも同じ作用によって食欲をはじめとした体調維持ができているのではないかと考えております。

 

腫瘍を患う小動物に対しArtemisia annuaと鉄剤を用いた治療についての回顧的研究

(Retrospective study of small pet tumors treated with Artemisia annua and iron)

 

 

以下はこの論文の考察に記載されている一部です

 

注目すべきことに、ペットの飼い主の大多数が、Artemisia annua投与後、ペットの体調が改善したと報告しました。

中には活動性が向上した動物もいれば、よりリラックスした動物もいました。

もちろん、これらの観察結果は主観的であり定量化不可能であり、これらの報告がペットの治療成功後の飼い主の心理状態を反映しているかどうかは不明です。

しかしながら、この観察結果は軽視すべきではありません。

Artemisia annua投与による予期せぬ、意図しない好ましい副作用の可能性を排除することはできないからです。

実際、これらの観察結果を裏付ける先行研究がいくつかあります。

アルテスネート投与を受けたウサギの脳内セロトニン血清濃度は、未投与の対照動物と比較して有意に高かったと報告されています。

Zhuらは、ジヒドロアルテミシニン、アルテスネート、またはアルテメテル投与によって、疼痛、不安、および抑うつ行動が有意に緩和したと報告しています。

アモスらは、アルテミシニンが脳内のシナプス後ドーパミンD2受容体に作用することで鎮静作用を発揮すると示唆しています。

アルテミシニンのこの新たな作用の可能性は、今後さらに詳細な研究を行う価値があります。

 

Notably, the majority of pet owners reported that the animals appeared to feel better after A. annua treatment; some were more active, while others were more relaxed.

Of course, these observations are subjective and non-quantifiable, and it is unclear whether these reports may reflect the pet owners psychological condition after successful treatment of their pets.

Nevertheless, this observation should not be neglected, as it cannot be excluded that there may be an unexpected and unintentional positive side effect of A. annua-treatment. Indeed, there are some previous studies that support these observations.

The serotonin serum levels in the brains of artesunate-treated rabbits has been reported to be significantly higher compared with in untreated control animals .

Zhu et al reported significant remissions in nociceptive, anxiety and depressive behaviors by dihydroartemisinin, artesunate or artemether.

Amos et al  suggested sedative properties of artemisinin mediated by artemisinin’s effect on postsynaptic dopamine D2 receptors in the brain.

This novel aspect of artemisinin’s possible activity deserves further detailed investigation in the future.

 

ちなみにアルテミシニン、アルテスネート、アルテメテルは体内でジヒドロアルテミシニンに変換されて効果を示します。

アルテミシア アンヌア(クソニンジン)にはアルテミシニンの他に複数種類のジヒドロアルテミシニンも含まれておりますし、その他にも多くの成分が含まれ疼痛、炎症を鎮めます。

またカスチシンをはじめとした複数の別の成分が、がんや腫瘍の細胞破壊を手伝っております。

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