
04-2958-9699
お問い合わせ
水木金土 白石まで
04-2958-9699
お問い合わせ
水木金土 白石まで
青蒿と黄花蒿
マラリアの特効薬であるアルテミシニン発見に対してノーベル賞が授与されたのは2015年でした。それをきっかけとしアルテミシニンやその誘導体に抗癌効果を持つ事を知ったのですが、色々な記事や論文に、『青蒿からアルテミシニンを発見』であったり『黄花蒿からアルテミシニンを発見』であったり『青蒿イコールアルテミシアアンヌア』であったり『黄花蒿イコールアルテミシアアンヌア』と記載があり混乱した事を覚えています。
● 青蒿と黄花蒿は別の植物です
● 青蒿は黄花蒿です
● 黄花蒿は青蒿です
これらはなんだか変ですね、しかし正しいのです。
植物分類学的に青蒿はArtemisia carvifolia (カワラニンジン)であり、黄花蒿はArtemisia annua (クソニンジン)です。しかし中国では、地域にもよりますが古来青蒿は両方を区別せず共に青蒿として利用されてきたようです。中国での青蒿の利用は2000年以上の歴史があり、似ている見た目と効能効果も近いものがあり、2つを区別する必要なく利用されていたのでしょうし、植物の分類学が生まれるはるか前でもありました。いつからかカワラニンジンが非常に少なくなり、オウカコウが主体となっています。現代の中国では青蒿は黄花蒿の地上部分と記載されていたり、青蒿は青蒿や黄花蒿の地上部分とか全草と記載されています。
これは日本の薬局方に当たります。
来源 本品为菊科植物黄花蒿Artemisia annua L.的干燥地上部分。秋季花盛开时采割,除去老茎,阴干。
起源 本品はキク科黄花蒿(Artemisia annua L.)の地上部を乾燥させたものです。秋に花が満開の時期に収穫し、古い茎を取り除き、日陰で乾燥させます。
来源 为菊科植物青蒿或黄花蒿的全草。夏季开花前,选茎叶色青者,割取地上部分,阴干。
起源 菊科植物青蒿または黄花蒿の全草です。夏に花が咲く前に、茎や葉の色が青いものを選び、地面の部分を切り取り、陰で乾燥させる。
来源 药材基源:为菊科植物黄花蒿的全草。拉丁植物动物矿物名:Artemisia annua L. 采收和储藏:花苗期采收,切碎,晒干。
起源 薬用原材料:キク科黄花蒿の全草。学名:Artemisia annua L. 収穫と保存方法:開花期および苗期に収穫し、刻んで乾燥させる。
日本でも平成19年以前、専ら医薬品にセイコウは掲載されていましたがオウカコウは掲載されていませんでした(専ら医薬品ではカタカナ表記されています)。
オウカコウが専ら医薬品として追加掲載されたのは平成19年4月17日です。厚生労働省医薬食品局長からの通達第2・3・(4)にセイコウをオウカコウ及びセイコウに整理とあります。そして別紙第7においてエンジュの次にオウカコウ、クソニンジン、帯果・帯花枝葉を加えると記載されています。
これは推測になりますが、日本ではセイコウに元々両者を含んでいましたが、アルテミシニンの発見が植物分類学的にいう黄花蒿からの発見であり、セイコウとオウカコウを明確に区別する傾向が強くなった為に専ら医薬品の分類にもオウカコウを加えたのではないかと思っています。
青蒿と黄花蒿は異なる効能が記載されていることが多々あります。
しかし中国の《中国药典》・《中药大辞典》・《中华本草》やその他に記載されている青蒿というのは黄花蒿もしくは青蒿と黄花蒿であります。
従ってこれらに記載されている効能効果イコール黄花蒿の効能効果と考えて差し支えないのではないでしょうか。
これらに記載されている効能効果を並べると、抗がん作用、抗マラリア作用、抗菌作用、抗真菌作用、抗ウイルス作用、黄疸、腎盂炎、下痢、発熱、咳、頭痛、鼻出血、蕁麻疹などが挙げられます。
特に最近の論文では黄花蒿であるアルテミシア アンヌア(クソニンジン)に肝臓保護作用、腎臓保護作用があるという論文が複数発表されており、近年注目の抗がん作用や抗マラリア作用に加え、古来より応用されていた肝臓や腎臓に対する利用にスポットライトが当たりつつあるのではないでしょうか。