がんと生きる

中央動物病院

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〒350-1308 埼玉県狭山市中央4-24-4

診療時間:午前9時~12時/午後4時~7時 休診日:土曜日、日曜日

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がんと生きる

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掲載内容

  ● はじめに
  ● 悪液質にならなければ頑張れる
  ● がん・悪性腫瘍の最後
  ● 悪液質について
  ● 悪液質にさせないためには

(悪液質にはがん悪液質のほかに心臓悪液質や腎臓悪液質などがありますが、ここではがん悪液質について述べます。)

はじめに

 
 がん・悪性腫瘍を患う犬・猫にできるだけの事をしてあげたいと考える方のために少しでもプラスになる情報を提供したいと考えています。

 がん・悪性腫瘍を患ったならば、飼い主はなんとしても治してあげたいと望み治療を受けさせてあげるのですが、がん・悪性腫瘍の3大療法である外科療法、化学療法、放射線療法をもってしても、すべてのがん・悪性腫瘍を征圧するということは事はできません。
いまだに諦めざるを得ないという例が多く存在する現状があるのです。
そんな状況に置かれ、飼い主が悲しみに明け暮れていると、愛犬や愛猫は飼い主の感情を敏感に感じ取り、不安な気持ちになり、暗い気持ちになり、飼い主が悲しんでいる事を悲しみ、ひいては愛犬・愛猫の免疫力や抵抗力を低下させ、さらに心理的要因によっても食欲を低下させてしまいます。
愛犬・愛猫がそのような精神状態にならないようにするために、またなるべく苦しまないようにするために、そしてなるべく長く一緒にいられるようにするために出来るだけの事をしてあげたいと考えるのは自然の事です。
当院ではそのお手伝いが出来る様にと考え情報を提供致します。

悪液質にならなければもっと頑張れる

   2017年日本静脈経腸栄養学会雑誌によると、人の場合がんで死亡する症例の50%以上が悪液質に陥り、がん患者が死亡する直接の原因が悪液質であることが30%にも達すると報告されています。
悪液質に陥らなければ少なくともがんを患った人の30%は延命が望めるのです。
さらに悪液質が引き金になり起こるトラブルが原因となる死までも含めると、悪液質を防止することによる延命はかなりの率の人にもたらされるのです。
そしてこれは犬・猫においても同様です。
従って、がん・悪性腫瘍を患った犬や猫のために、飼い主・獣医師ともに悪液質に陥らないように協力していかなければなりません。

がん・悪性腫瘍の最後

 がん・悪性腫瘍は人や動物を死に追いやりますが、その方法は多岐にわたります。
がん細胞や腫瘍細胞が原発臓器を破壊し生きられなくする、転移先の臓器を破壊し生きられなくするというのが我々が普通に考えるがん・悪性腫瘍による死であると思います。

 しかしながら実際にはこのこと以外にも色々なことが起こっているのです。
脈管系にがん・悪性腫瘍細胞が詰まり血流を阻害し、酸素不足や栄養不足で臓器がダメージを受けて迎える死というのもあります。
また、体中に小さな血栓ができ、あちこちの小さい血管を堰き止められて迎える死(播種性血管内凝固による死)も意外に多く見られます。
出血によりもたらされる死もあります。
私たち獣医師がよく遭遇し緊急の手術を実施する事になるのが、脾臓の血管肉腫が破裂する事による出血です。
そして悪液質による死です。
がん・悪性腫瘍による過剰なエネルギー消費や代謝異常などにより引き起こされる悪液質は、痩せ衰えさせ免疫力を低下させ死に至らしめる事になります。
その他に、我々が行う治療によりがん細胞や悪性腫瘍細胞がいちどきに大量に破壊されることで起こる腫瘍融解症候群などもあり、本当に多岐にわたるのです。

悪液質について

医学における悪液質の定義

 悪液質は基礎疾患(がん・腫瘍、心臓病、腎臓病など)に関連して生ずる複合的代謝異常の症候群で、脂肪組織減少の有無にかかわらず、筋肉量の減少を特徴とします。
臨床症状としては、成人では体重減少、小児では成長障害が見られるとされていて、飢餓、加齢による筋肉減少症などと異なる病態であるともされています。
これは2007年に定義づけが行われ、古くからある概念ではあるが医療分野でさえ最近まで統一見解がなかったのです。

医学における悪液質の診断基準

   12カ月以内に5%以上の体重減少、筋力低下、疲労感、食欲低下、除脂肪体重低値、生化学データCRP、Hb、Albの異常。

悪液質は3段階ある

  悪液質には前悪液質、悪液質、不可逆的悪液質の3段階があります。
人では不可逆的悪液質に陥ると生命予後が3カ月以内となります。
動物ではこの段階に陥ると生命予後はもっと短期間であるのは間違いありません。
従って不可逆的悪液質には絶対に陥らないようにしなくてはなりません。
可能であれば前悪液質の段階から最大の処置を講じる事が理想です。

がん悪液質の本態

   がん悪液質の本態は全身性慢性炎症であると理解されています。
がん・悪性腫瘍の細胞は炎症性サイトカインを放出する事が知られています。
これが体のあちらこちらに炎症を起こさせます。
その結果全身の代謝機能が衰え栄養の利用効率が悪くなり体調はさらに悪くなるのです。
この、炎症の起こっている程度を知ることが出来るのが血中CRP値で、これはがん悪液質の指標となると考えられています。
CRPの上昇を抑える処置を行う事が出来れば悪液質をコントロール出来ると考えられ、悪液質を抑えることが出来れば生活の質(QOL)の改善と延命を望むことができるのです。

悪液質にさせないために

しっかり食べさせる

   がん・悪性腫瘍を患う犬や猫の多くは食欲不振や体重減少が起こります。低栄養は活動性の低下やQOLを低下させるとともにがん・悪性腫瘍と戦う力が失われ、さらにはがん・悪性腫瘍に対する治療抵抗性をも低下させてしまいます。
悪液質にならないようにしっかり栄養をつけさせてあげる事が重要です。
医療分野では食欲不振に対し薬剤やサプリメントを使用することで、食欲不振に対する措置が講じられています。
薬剤では食欲増進作用のあるコルチコステロイド、メトクロプラミド、酢酸メゲステロールなどを使用しています。
サプリメントでは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)が生体内の代謝異常を改善することによって、食欲不振を改善する効果があることが知られ使用されています。
BCAAにはその他にも有用な作用がある事が知られています。
その代表は後述する筋肉減少症(サルコペニア、筋肉量減少症ともいう)の予防や改善効果と、インスリン様作用による代謝の改善効果です。
加えてがん・悪性腫瘍細胞の増殖を抑制する効果、貧血改善効果もあります。
BCAAの中でインスリン様作用をもつ事が知られているのはイソロイシンとロイシンで、イソロイシンがより強い作用を示します。
このインスリン様作用についてですが、がん・悪性腫瘍が原因となり放出される炎症性サイトカインによって起こる全身の炎症反応のためにインスリンの抵抗性を示すようになり、その結果さまざまな弊害が出てくるところをBCAAのインスリン様作用で改善が図れるのです。
当院でも食欲不振の予防と食欲不振の改善に対し、主にサプリメントを、状況によっては薬品を使うことで悪液質の進行を防いでいます。

CRPを上昇させない

   医療分野においてCRP値上昇は、がん・悪性腫瘍の予後不良因子である事が知られており、犬・猫でも同様であると考えられます。
最近人ではがん・悪性腫瘍によるCRP値上昇を抑えるために、高濃度のDHAを含むサプリメントを摂取することが一般的になりつつあります。
そして獣医療においても、最も有名な米国がん専門医の財団ホームページでがん・悪性腫瘍を患う犬や猫の延命のためにDHAを摂取させるよう強く推奨しています。
DHAがCRP値上昇を抑えるその本体はレゾルビンという抗炎症物質です。レゾルビンはEPAから生体内で生成されるものがよく知られています。
DHAからもレゾルビンは生成され、EPAからのレゾルビン以上に抗炎症作用を有していることがわかると共に、用量依存的に疼痛抑制作用があることも確認されていて、がん・悪性腫瘍の他に関節疾患の痛みに対しても利用されているくらいですので、がん・悪性腫瘍の疼痛も緩和してくれる事がよくわかります。
さらに最近DHAとDPA(n-6)の組み合わせでより効率よくレゾルビンへ変換され、そしてさらに強力な抗炎症作用、疼痛緩和作用を示すことが論文発表されていたり、特許を得たりしております。
当院では、DHAとDPAを高濃度に含むオメガ3脂肪酸サプリメントを推奨しております。

筋肉減少症(サルコペニア)にさせない

   筋肉減少症は、術後合併症のリスク因子及び予後不良因子として多くの報告がされています。
筋肉減少症は、がん・悪性腫瘍を患ったために起こる活動性の低下や食欲不振に加え、全身炎症反応によるタンパク異化亢進などにより進行していくことが知られています。
前述のオメガ3脂肪酸により炎症を抑え、BCAAによる食欲不振改善と蛋白合成促進作用を生かし筋肉量の維持や増加を図る事が必要です。
BCAAはアルブミン値の上昇、筋肉量の増加、貧血の改善、がん・悪性腫瘍細胞の増殖抑制作用、疲労感を減らす作用、食欲増進作用を持ち合わせていますのでアミノピュアーのようなロイシン高配合BCAAが、がん・悪性腫瘍を抱える犬猫には非常に有用です。

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