プロバイオティクスについて

中央動物病院

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プロバイオティクスについて

STAFF BLOG

2018/11/26 プロバイオティクスについて

プロバイオティクスになにを求めるか、どのようなものか

 

人はプロバイオティクスになにを求めるか、ほとんどの場合その答えは明解であり、人を含めた動物の健康に役立ってくれる事を求めています。
プロバイオティクスはどのようなものと考えているかと尋ねると、多くの人は生きて腸まで届き、健康のために働いてくれるものと答えるのではないでしょうか。
しかし、犬猫に関しては生きて腸まで届いてくれる事をちゃんと証明できている製品は多くないのです。
このことについては後程少し解説させていただきます。

 

当院で使用するプロバイオティクス(広義の意味で)の紹介

 

ビオフェルミンR

ビオフェルミンRは Streptococcus faecalis という菌の製剤です。ビオフェルミンSとの違いについてでです。ビオフェルミンRは複数の抗生物質に耐性を持っている Streptococcus faecalis を原料としています。抗生物質で下痢しやすい場合に抗生物質と併用してもらうための製品になります。この薬剤に対するインタビューフォームの中の薬効を裏付ける試験成績という項目にヒト、マウス、ラットで有効性が調べられていることがわかります。

 

ミヤBM

ミヤBM 酪酸菌 (宮入菌) (Clostridium butyricum MIYAIRI) という菌の製剤です。
この薬剤に対するインタビューフォームの中の、薬効を裏付ける試験成績という項目にヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、モルモットで有効性を調べています。
この項目の中で非常に興味深い記事がありますので紹介します。
「人胃液中において、酪酸菌(宮入菌)は他の乳酸菌類との胃酸抵抗性を比較したところ、pH3,5 以下において、乳酸菌類はほぼ完全に死滅するのに対して、酪酸菌(宮入菌)はほとんど影響を受けなかった(in vitro)。」
とあります。
犬、猫の胃内 pH は1~2と言われていますので(個体差や食事内容等によってこの範囲外も当然あります)やはり乳酸菌製剤は犬や猫では生きて届く可能性がかなり低くなるでしょう。
その点宮入菌は芽胞菌に属しますのでいくら強い胃酸であってもやっつけることは出来ず、狭義のプロバイオティクスと言えます。
因みにミヤBMは犬で(ビーグル犬)反復投与毒性試験を行い、異常がなかったことも記載されています。

 

おなかのサプリAH

これはバイオジェニックスであり、広義のプロバイオティクスに属します。
乳酸菌の菌体と乳酸菌の産生するバクテリオシンが含まれており、悪玉菌をやっつけ、善玉菌を増やす働きを持っています。
この製品は、善玉菌悪玉菌の名づけの親でありプロバイオティクスの大家、光岡知足東京大学名誉教授が特許取得者に名を列ねている製品です。

 

生きて腸まで届く

 

最近、生きて腸まで届く、とテレビCMが流されていますが、このCMが伝えたい意味を読み取ってみます。
多くの乳酸菌製品は実は胃の酸で殺菌されるために、生きて腸まで届いていませんよ、しかし我が社の乳酸菌は生きて腸まで届くので、多くの他社製品とは別物ですよ!と宣伝しているのだと思います。
しかし人では腸まで生きたまま届くことが判明している製品も、犬や猫の場合生きて腸まで届くかどうかはわからないのです。
なぜ人では生きて腸まで届く製品も、犬や猫では素直に当てはめられないのでしょうか。

 

それは人の胃内のpHと、犬や猫の胃内のpHがかなり異なるために起こるのです。

 

人と比べ犬及び猫の胃内のpHはより低く、殺菌能力が人以上に高いためなのです。
その、胃内の酸性度についてですが、空腹時の人の胃内は pH 1,0~1,7 の間にほとんどが入り、犬や猫も pH 1,5前後 とほとんど差はありません。
しかし食後の胃内はと言いますと、人は pH 4,0~5,0 と急上昇するのに対し、犬や猫は pH 2,0 程度と非常に大きな差があり、このことにより犬、猫では多くの種類の乳酸菌類は殺菌されてしまうのです。
再びプロバイオティクスについて

 

プロバイオティクスの意味は変遷している

 

プロバイオティクスには広義と狭義の意味が存在し、意味することはハッキリしていても実際に境界はすごく曖昧です。

 

プロバイオティクスとは

当初はLilly and Stillwell (1965)が、ある種の原虫によって産生される他種の原虫の増殖を促進する物質と定義しました。
次にParker (1974)が、宿主の腸内フローラに有益な影響を及ぼす効果のある動物用飼料添加物と定義しました。
Fuller(1989) がこの定義を、腸内微生物のバランスを改善することによって宿主動物に有益に働く生菌添加物と改めました。
さらに現在では添加された生菌が生きたまま腸に届いてくれているはずと考えられているのではないでしょうか。

 

狭義のプロバイオティクス

Fuller(1989) の定義がまさに狭義のプロバイオティクスになります。
しかし現在多くの狭義のプロバイオティクスも胃で殺菌される事が知られ、さらに生きている菌でも死菌となっても効果を現すことも知られるようになりました。
また、犬や猫では人と異なりほとんどの乳酸菌を殺菌してしまう胃の環境である事が知られ人で生きて腸まで届くとされても犬猫ではそうはいかないであろう事がわかっています。

 

広義のプロバイオティクス

Parker (1974)の定義 【宿主の腸内フローラに有益な影響を及ぼす効果のある動物用飼料添加物】 を広義のプロバイオティクスと私は考えていて、狭義や広義をつけなくても獣医学的にはこの定義がプロバイオティクスとしていいように思っています。
この定義では、生菌のほかに、死菌や菌の産生物質による効果のことを言うバイオジェニックスや、プレバイオティクスも含まれることになります。

 

結局のところ・・・

人では生きて腸まで届くものも、犬や猫では胃で殺菌され、結局バイオジェニックスと同じになっている事が多々あるため、広義の意味でプロバイオティクスを使うのが適切なのではないでしょうか。

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