アルテミシニンによる犬猫のがん・腫瘍治療、比較的新しい知見

中央動物病院

04-2958-1211

〒350-1308 埼玉県狭山市中央4-24-4

診療時間:午前9時~12時/午後4時~7時 休診日:土曜日、日曜日

lv

アルテミシニンによる犬猫のがん・腫瘍治療、比較的新しい知見

STAFF BLOG

2023/05/05 アルテミシニンによる犬猫のがん・腫瘍治療、比較的新しい知見

当院では犬猫のがん・腫瘍治療にアルテミシニンを応用しております。

ところが、この数年世界中でコロナウイルス感染症が蔓延し、社会活動が大きく制限された影響からか、アルテミシニンが入手困難となり、しばらく使用できませんでした。

しかし、ようやく以前と変わらない状況となり、アルテミシニンの使用を再開しております。

 

そこで今回犬のがん・腫瘍治療におけるアルテミシニンの効果に関する論文中に紹介されている内容の一部を紹介します。

 

Artemisia annuaは、中国の伝統的な漢方薬として使用され、近年その抽出物がマラリア特効薬として使用され、開発者はノーベル賞を受賞するに至っています。

この植物から抽出される成分のアルテミシニンは、がん・腫瘍細胞に対して抗がん作用を持っていることも知られています。

 

論文には、犬のがん・腫瘍治療において、アルテミシニンを含有するArtemisia annuaの全草抽出物の効果がアルテミシニンやその誘導体投与による効果と比べ良好な結果が得られていることが紹介されています。

 

犬のがん・腫瘍に対して、Artemisia annuaを使用した治療法に鉄を追加することで、治療効果が増大したかどうかを検討しています。

36種類のがん・腫瘍細胞株に対し、アルテミシニンの誘導体単独と鉄製剤を加えた場合の比較をし、11の細胞株はアポトーシスの増加を示さず、9つの細胞株は増殖を抑制されなかったどころか鉄そのものが持つがん・腫瘍細胞増殖の増強効果が見られた事を報告しています。

 

一般的にはArtemisia annuaに加え鉄製剤を使用すると、がん・腫瘍の縮小効果がより強く得られ、生存率も向上するとされています。

しかしこの研究では、犬のがん・腫瘍治療において、Artemisia annuaと鉄を使用することが必ずしも有効であることは限らないと言う事を示しています。

 

がん・腫瘍細胞はもともと正常な細胞と比べ鉄を多く含み、アルテミシニンやその誘導体がその鉄に反応し細胞を死に追いやります。

好都合なことに鉄を多くは含まない正常細胞を傷つけず、がん・腫瘍細胞を選択的にやっつけるのです。

 

がん・腫瘍患者が鉄欠乏に陥っていない限り鉄製剤を与える必要性は高くなく、場合によっては鉄製剤を与える事がマイナスに働く可能性さえある事を伝えています。

TOP