ステロイドの使い方

中央動物病院

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ステロイドの使い方

STAFF BLOG

2019/08/30 ステロイドの使い方

副腎皮質ホルモン(以下ステロイドとします)は獣医学で非常に多く使用される薬の一つです。

使い方次第ではすごく良い薬ですが、使い方を間違うと怖い薬でもあります。

そして今はほとんどの飼育者の方が怖い薬というイメージを持っているように感じています。

ステロイドは、使うべき疾患、使うべきではない疾患、という単純なパターンだけではありません。

一般的に使うべきでない疾患でも単発で使用することによって死から救える事もあるのです。

そんなステロイドについて考えさせられる記事を見つけましたのでここでご紹介します。

神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授である岩田健太郎先生の文章です。

 

感染症患者にステロイドはご法度か

研究の背景:ステロイドは怖い。だが強い。さてどうする?

 研修医時代、感染症の指導医を激怒させる最大の原因は、「診断も付いてないのにステロイド、で、実は感染症」のケースだった。「不明熱、炎症反応高値、ステロイドパルスいてまえ」というプラクティスは、当時も今も存在する。われわれはこれをパルスと言わず、バルスと呼ぶのだが、未診断、未治療の感染症患者にステロイドを盛るのは極めて危険だ。顕著な例は、1980年代のエイズ患者だ。未診断のエイズ患者がニューモシスチス肺炎になる。間質性肺炎などと誤診され、ステロイドが盛られる。数日内に患者の容態は急速に悪化し、死に至るのであった。

 とはいえ、ステロイドであれば何でも悪というわけではない。

 

大事なのは「診断が付いているか」

 

である。低酸素血症を伴うニューモシスチス肺炎(当時はカリニ肺炎と呼ばれた)には、肺炎治療と同時にステロイドを併用することで患者の死亡リスクが減る、という古典的な研究がある1

1Bozzette SA, Sattler FR, Chiu J, Wu AW, Gluckstein D, Kemper C, et al. A Controlled Trial of Early Adjunctive Treatment with Corticosteroids for Pneumocystis carinii Pneumonia in the Acquired Immunodeficiency Syndrome. New Engl J Med 1990 Nov;32321:1451-1457.

つまり、

ステロイドは善でも悪でもない。要は使いようだ。

 

そして、その前提には「正しい診断」が常に必要である。後に、感染症患者であっても原因治療が適切になされている限り(ここが肝心)、ステロイドの使用は患者の予後をいたずらに悪化させないことが分かってきた2。重症ウイルス性肝炎など、幾つかの例外は存在するが3

2McGee S, Hirschmann J. Use of Corticosteroids in Treating Infectious Diseases. Arch Intern Med 2008 May 26;16810:1034-1046.

3Gregory PB, Knauer CM, Kempson RL, Miller R. Steroid therapy in severe viral hepatitis. A double-blind, randomized trial of methyl-prednisolone versus placebo. N Engl J Med 1976 Mar;29413:681-687.

以下略

 

獣医療分野も同様です。ここぞという時のステロイドの使い方で重症の犬・猫を死の淵から救い出せるのです。

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